INTP型のブログ

苦味があるな?

人間は愚か

こんな実験がある。

 

  1. 被験者は楽な作業が大変な作業を行う実験であることを告げられる
  2. 参加者の二人に一人は”決断者”に任命され、乱数装置を与えられる
  3. 乱数装置は緑と赤の円をランダムに表示する機械で、緑が出たら楽な作業を、赤が出たら大変な作業を”決断者”は行う
  4. 決断者が行うことになった作業と違う作業を決断者ではない人間がやることになる
  5. ※決断者はひとりで部屋に残され、乱数装置を使って結果を参照する

 

一文で言うと、「二人に一人はコイントス役を命じられて、楽or大変な作業を決める。ただしそれはお前だけの一人部屋でやってね」というもの

 

被験者は監視下にないので乱数装置を使わず楽な作業をいきなり始めてもいい。ってぐらいズルがしやすい環境下において、人間はズルをするのかが見られる実験。

 

その結果は

 

  • 参加者の92%が自分に楽な作業を割り当てた
  • 乱数装置を使わず楽な作業をいきなり始めたり、
  • 何度も装置のボタンを緑の丸が表示されるまで何度も押したりして

 

面白いことに、研究者は乱数装置を最初の数回は必ず赤い丸を表示するように設定していたので、緑の丸を表示させた奴らはもれなくインチキをしたということ。

 

また監視カメラの映像は、緑の丸が出るまで繰り返した被験者の、まるで自らのやり直しが正当化されていると言わんばかりに、気分良く楽な作業に取り掛かる様子を捉えたという。

 

なお、この実験を何度も繰り返したところ、

 

  • 実験参加者の90%はインチキをした

 

という結果が得られたとのこと。

 

そして、この実験が面白くなってくるのはここからである。

 

---

 

 

研究者は次に、正当化に関する調査を行うことにした。

 

  1. 先ほどと同じ実験を行う
  2. そして「あなたはどれくらい公平に振る舞いましたか?」と質問を行う
  3. その後、仕掛け人を用意し、インチキをさせて楽な作業をやらせる
  4. その様子を参加者に監視カメラを通じて見せる
  5. ※仕掛け人は別の参加者として認識される

 

最後に「その人物(つまり仕掛け人)はどれくらい公平に振る舞いましたか?」と質問すれば完了だ。

 

つまり、「インチキをした自分への評価と、インチキをした他人への評価は合致するのか」ということだ。最初の質問で公平に振る舞ったと答えたならインチキをした他人も公平だし、逆に公平ではなかったといったなら他人への評価も公平ではなかったとなるはずだ。

 

しかし、結果は

 

  • インチキをした自分は”それなりに公正だった”と評価
  • インチキをした他人は”明らかに非人道的だ”と評価

 

この結果に対して研究者は

 

つまり、大半の人は、自分にとって殆どマイナスにならない場合には利己的な行動を取るだけでなく、自分と同じ勝手な振る舞いをした人間に対しては躊躇なく避難するだろうということだ。すこし言い方を変えれば、ほとんどの人は自制心を働かせて道徳規範を守ることができないうえに、さらにおそらくもっと驚くべきは、自分のやった不正行為は容認するのである。誘惑に負けただけでなく、あとから自分のとった行動にはきちんとした理由があると信じ込んでしまうのだ。こうした現象は、自分の誤りから学ぶという点に関して言えば、まさに諸悪の根源になりうるのが想像できるはずだ。

 

と、コメントしている。

 

彼ら彼女らに対して、「なぜインチキをしたのか?」質問した場合の回答は以下のようになったとのことだ。

 

  • 「まあ、普段はこんなことはしないけど、今日はとても疲れていたのでしょうがなかった」
  • 「予定に送れるのではないかと不安だった。だから仕方がなかった」
  • 「次の番の人が、難しい問題が好きそうなエンジニアタイプの人だと思ったから」

 

---

 

研究者は更に踏み込んだ実験を行った。脳のどの部位が正当化をさせているの、大まかに感情か意識的な理性のどちらが影響しているのか調べた。

 

そのために、2番目の実験方法に更に追加して、「公平に振る舞ったか?」についてたずねる際、目の前のコンピュータの画面から消えたばかりの一連の乱数を記憶させた。

 

これによって大きな認知的負荷を与えた上で、自分あるいは仕掛け人の行動について意見を聞いてみたわけだ。

 

その結果

 

  • 参加者たちは他人の行動に向けたのと同様の非難を、自分の身勝手な行動にも向けた

 

というデータが得られた。

 

研究者は

 

彼らは自分が誘惑に負けたことに気づいて、罪悪感に駆られ、それを素直に認めたのだ

 

とコメントしている。

 

その後、インチキ自体は感情と理性どちらが影響しているのか同様の手段で調べたが、どちらも同様にインチキをすることがわかった。

 

これは被験者が誰にもばれない状態にあるため、理性が影響外にあると言え、つまりインチキの決意には感情的な反応が影響していると考えられた。

 

---

 

ある実験では、一度も嘘をついたことのない三歳の幼児に自分や他人の気持ちを推測する手段を教えた。

 

具体的には、特定の状況において、自分の考えや行動について何が他の人にバレてしまう可能性があり、何が知られずに済むのかについて、子どもたちが理解しやすいよう教えた。

 

その後当てっこのゲームをさせると、上記を教えられた子供は、教えてもらえなかった子供より嘘を付く回数が多かったことがわかった。

 

この結果から研究者は

 

推測力やそれと関連する認知スキルが向上することで子供は巧みに規則を破り、自分の勝利に役立てた。

 

とコメントした。

 

つまり、正当化(嘘)の能力は認知能力の影響が大きいことを示した。そして認知能力は年齢の増加に伴い向上していくものでもある。

 

---

 

すっごい単純化すると

 

  • 子供はズルをする(感情のコントロールが苦手なため)
  • 大人は嘘を付く(認知機能の向上に伴い正当化を行う)

 

ってことですね。

 

そういう意味でいうと一番やべーやつは、感情のコントロールが苦手(ズルをする)な上に頭が良いやつ(自己正当化する)ってことになります。

 

どっかでIQが高いほど自分に嘘を付けるから、正当化しやすいみたいな話も読んだことがあるんで、多分間違いないかなと思います。

 

だから、一番いいのは

 

  • 行動に対しては理性を使う(ズルをしない)
  • 結果に対しては感情を使う(自己正当化をしない)

 

ってことになりますね。

 

感情のコントロールをする力 = セルフコントロール能力だと言えて、感情を使う力 = 共感力と言えるんで、この2つの力を使える人達が増えるといいっすねと思いつつ、そんなうまい話はないわなと思いつつ。

 

『ズルはするけど自己正当化しない or ズルはあんまりしないけど自己正当化はする』はするのどっちかがほとんどでしょうね。『ズルもするし、自己正当化もする』もまあ結構いそうだなぁと思いつつ。

 

……いや違うな。実験のパターンだと『大体はズルもするし自己正当化もする』なわけだから、監視下にあるケースでようやく"ズルはあんまりしないけど自己正当化はする"が成立するかもねってぐらいなのか。うっわ

 

この実験で一番物悲しさがあるのは”人の振り見て我が振り直せ”は全く通用しないって部分ですかね。泥棒が自分のものを誰かに盗まれたとしても、その泥棒を超絶に批判しつつ物を盗み続けるというのは納得の行く話ですし。

 

よくTwitterで過去の発言ほじくり返して批判したりする人いますけど、自己正当化を強めるだけで「ああ、私が間違っていました」なんてパターンはありえんでしょうね。SNS使える程度には認知機能が強い人種には特に。

 

自分がやられたら嫌でしょ?とかも意味なさそうっすね。自分のやってる行為は何かしらの理由付けで正当化されるわけだから、それはそれこれはこれ理論に繋がりそう。

 

他人事じゃないから僕も自己正当化には気をつけたいなぁと思いつつ、多分思考が自動的にそっちに行くことが多いような気がするので、できる限りズルをせず生きたいですね。感情についてもよく考えるようにしつつ。