INTP型のブログ

苦味があるな?

ループモノはどうして面白いのか?

結論から言うと『全てのバッドエンドを見せた上で、最高のハッピーエンドを見せられるから』に尽きると思います。

 

例えばミステリ系でループモノは扱いやすいと思っているんですが、それはなぜかといえば”惨劇自体を回避できる”から。

 

主人公の家族が惨殺されたところから始まり、その犯人を探す物語みたいなのは、最終的にハッピーエンドに落ち着けたとしても復讐の達成でしかないんですよ。

 

幸福度という観点から言うと、惨殺によってマイナスに振り切った数字を、マイナスだけど前よりは良いぐらいのラインに持ち上げられたぐらい。

 

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日常には戻れてないわけですから、こんなもんじゃないかと思います。

 

そしてこれは自論ですが、幸福度というのは直近の上下幅に対しての感覚だと考えています。

 

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だからマイナスの中での上下動でも幸せではあるんですが、最大限の幸せではないんですよね。

 

今回の家族惨殺に対しての最大限の幸福は家族の生存なんですよ。だって死んだのが辛くて悲しくて、それを埋めるために復讐するわけですから、であれば死そのものがなくなることが最も幸福だと言えます。

 

そこで出てくるのがループという舞台装置です。

 

死んだ人間が生き返ることは有りえませんし、仮に生き返ったとしても多くの信仰が示すとおり”元通り”は受け入れられません。死から蘇った生命は時間制限を持つ、もしくはゾンビのように生前の振る舞いから遠く離れた存在になるというのが宗教観に基づく普遍的な思想です。

 

だから生き返ってよかったねに対して読者は「いやいやそうはならんだろ」という違和感を覚えてしまい、没入感が失われてしまいます。

 

しかしループであれば死そのものをなかったことにできるわけですから、なんの違和感もなく最大幸福を実現できてしまうわけです。

 

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つまりループモノの面白さは本来実現不可能の最大幸福達成にあると考えられるわけです。

 

またこれ以外にも複数回のループを前提にするのであれば、よりひどい不幸を主人公に与えることもできます。例えば仲間の死とかね。

 

幸福度は直近の出来事に対しての差によって発生するものなので、仲間の死によって落として数字をループによって正常化することができるため、その差を読者は楽しむことができます。

 

これがループという舞台装置を使わない場合、ご都合主義での生存を使わなくてはいけなります。これもまたループモノの強さでしょう。

 

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ループモノの問題点は緊張感を損なわせる部分にありますが、同時にそれは緊張感の演出に使うことにも繋がります。

 

例えばラスボスに挑戦するとなったときに、ループが使用可能であると言うなら、何度も繰り返してしまえば確実に完全な勝利を演出できてしまうわけで、これは読者からすると消化試合のように見えてしまい、最大の山場がなんだかしょうもないものに見えてしまいます。

 

だからループモノの弱点は緊張感を損なわせる部分にあると言えますが、逆に言えばループを使えない状態にすれば緊張感は爆発的に向上します。

 

デフォルトの状態がループを前提としたものにある読者からすると、失敗したらもう終わりを提示されることは緊張感の演出に繋がってしまうのです。本来、ループを持たないのが普通の人間のはずなのに、物語を通じてループが前提になってしまっているから、それを取り上げられることは普通のはずなのに緊張感の発生に繋がります。

 

ループモノをシステム的に読み解いてもらうと分かるかと思うんですが、ラスボス、もしくは最大の山場の前では何らかの理由によりループを頼れなくなるケースが一般的ですので、そこを意識してみてみると面白いかもしれません。

 

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ここでどんなループのさせ方があるかも見ていきます。

 

  • 能力パターン

 

なんかよくわかんないけどループするパターンですね。いつの間にか使えるようになってたりします。

 

多くの場合は能力の発動のさせ方を主人公に理解させるために死をトリガーにしていることが多いです。

 

死をトリガーにすると能力説明を自然にできるというのもあるし、なにより次はもうないかもしれないという緊張感演出だったり、主人公の行動パターンの制御だったりに使えて利用しやすい面があるように見えます。

 

  • 夢とか世界パターン

 

世界そのものがループしていて、主人公視点だと死がトリガーになっているように見えるけど、本当は関係なくある特定の日付になるとループしているというパターン。

 

世界ごと隔離されているとかそういう説明が多いような気がします。夢の中に気づかない内に閉じ込められているとか。

 

大抵の場合、ループをさせている黒幕を突き止めるというのが物語の主軸になってたりする気がします。

 

  • ツールパターン

 

何らかの機械や道具によってループするパターンです。僕の大好きなシュタゲはこれパターンですね。

 

道具に依存するということは誰でも使えるわけですから、それを狙った組織と敵対したりするのが多いように見えます。

 

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物語システムについて考えると、大体ループはミステリ系と合わせられることが多いです。

 

  • ミステリ系

 

ループは謎の提示→それによる死亡(要はGAME OVER)→死亡の原因を探るという形と相性が良いです。

 

バッドエンドとして最もひどいのは誰かの死ですし、普通は自分よりも優秀な人間の暗躍に太刀打ちできませんが、ループの力によってじわじわと解決に近づけますから。

 

  • 異能系

 

超常の力を振るう存在の中で太刀打ちするための能力としてループを振り分けられるパターンです。

 

ループ能力者は身体的能力自体は一般人なわけですから、例えばドラゴンボールの御空に対して何度ループしようが太刀打ちすることなんて無理ゲーと感じるわけですが、そこを試行回数でなんとかするってパターンです。

 

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物語の基本的構図はどこまでいっても『落として上げる』、もしくは『上げて落とす』のどっちかだと思うんですよね。

 

大抵『落として上げる』が王道で、『上げて落とす』は鬱展開として扱われます。

 

ちなみに、作り手として考えると『上げて落とす』のほうが構成は楽です。

 

例えば『平凡な主人公の前に突如ドラゴンが!どうする?』ってなったときに面白みのある解決策を提示するのって面倒くさいじゃないですか。

 

でも物語構成として『彼女ができて幸せそうな友人の惚気話を聞いてたら、いきなりその友人が頭からぱっくりドラゴンに食われた』だったら、解決策を別に作る必要がなく、それでいて物語として成立させられるんですよね。

 

人間は性質として、不幸な物語を見せると『こっからきっと良くなってくれるはず…!』って期待して読み続けてくれたりするので。不思議なものでストレスを掛けても人間って魅力を感じるものなんですよね。そりゃDVから逃げられるんわけだわ

 

上げて落とすは楽なんですけど、落として上げるは落としたものに対しての解決策を考える必要があるから大変なんですよ。

 

世の中を見れば分かる話ですが、人間の問題解決能力なんてたかが知れてるんですよ。だから専門家って職業ができるわけで。

 

だから落とす幅は取り戻せる範囲にしないといけないんですけど、ループモノだったら思いっきり落としても問題ないんですよね。だってなかったことになるんだから。

 

そのへんもループが舞台装置として有能な理由な気がします。

 

……ちなみに他の物語パターンとして、上昇し続けるパターンと下降し続けるパターンがあります。

 

後者はいわゆる鬱ゲーの類ですね。多分今はもう需要が殆どないような気がします。一昔前のオタクたちがエロゲーを通じて遊んでたイメージ。

 

上昇し続けるパターンは逆に今のトレンドで、いわゆる成り上がり系ですね。スタート地点を普通に考えたら絶望のラインに設定して、そこからチート能力で上昇し続けるパターン。スラ転なんかはまさにこれな気がします。

 

誰かが「最近のオタク向けラブコメは1話でこじれて、仲直りまでやる」って言ってたんですが、多分これが示す所は落ちるの部分のストレスを感じたくない人が増えたってことだと思うんですよ。

 

でもこれは個人的に普通のことだと思っていて、つまりはオタク向けコンテンツに普通の人が増えたってことじゃないかと。

 

オタクは歪んでるのか何なのか分からんですが、鬱ゲーを心の底から楽しんでたり、落ちる部分に面白さを見出してたりするんですが、多分普通はそんな事できないんですよ。それはストレスでしか無い。

 

特にデスゲームみたいに謳われてるものならまだいいのかもしれませんが、普通のエンタメ作品を買って過剰なストレスの発生するシーンが目白押しだと読む気が失せてしまう。

 

だから引きとして例えばラブコメなんかだと、1エピソードの最終ページに喧嘩のシーンを入れて、そこから次エピソード。もしくは数回のエピソードで仲直りしていくみたいにするのが普通だったけど、最近の流行に合わせて1エピソードで喧嘩から仲直りまでやるんじゃないかっていう。

 

そういう意味でいうと、ストレスによって落とす部分を作るとしても、それは素早く取り除いて上げる必要があるのかもしれませんね。となると連載ものほどストレス演出は慎重にやらないといけなさそう。

 

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最後余談ですけど、早くまたストーリーに挑戦したいんですよね。

 

前回大失敗してから(恥ずかしくてブログに書いてないけど大失敗した)、物語構成について考えたり勉強したりしてきていて、後は実際に手を動かして経験値を溜めていく段階にはなっているんですが、どうしても余力がないという。

 

前回挑戦したときは金銭的余裕が正直あったので1,2ヶ月それに当てても問題なかったんですが、今はそういうわけじゃないからなぁ。

 

いや~目の前の問題から目を背けてしまうのは悪い癖だ。まず優先順位の高いことをやるようにしなければ……。